「その命令に従わない場合は、刑事告発も含めまして、しっかりした対応を行うとともに、林地開発許可自体の取り消しということも、行政手続法に基づいて行うことが視野に入って参ります」
知事臨時記者会見(令和3年11月12日金曜日)
甲斐市菖蒲沢地区におきまして、中部電力グループの株式会社トーエネックが発電事業者として建設中のメガソーラーにつきまして、これを第三者に譲渡するという行いが判明いたしましたため、本日、私どものこれに対しての考え方をお伝えさせていただきたいと思います。
このメガソーラーですが、十分な防災対策が講じられていないままに工事が滞っており、地域住民から今後の事業を不安視する声が県に寄せられておりました。
このため本年8月31日、私から同社に対しまして、発電事業者として責任を持って完全な形で工事を完了させ、あわせて稼動後の維持管理についても万全を期すよう強く申し入れたところでございます。
こうした中、昨日、同社は、現在建設中のメガソーラーを、本日、11月12日に、株式会社ブルーキャピタルマネジメントに譲渡する旨の通知文を持って、来庁したところでございます。対応した担当課長からは、地域住民への事前の説明を一切行わず、また未完成のまま譲渡することなどに対しまして、到底県としては受け入れられない、本社に持ち帰り再考することを強く要請をしたところでございます。
その後の返答がないため同社に問い合わせましたところ、本日、譲渡契約を締結したという回答がありました。これに対しましては、県からの申し入れを完全に無視された形になっておりまして、また、その再考の要請に対する返答もないまま一方的に譲渡を実行するということで、二重に、これまでのやりとりに対して信頼を申し上げてきたところではありますが、その土台を完全に破壊をされたということです。
私どもが申し上げているのは、安全確保、事業遂行をされる上で、トーエネックさんが準備されてきた行為に対して、しっかりと安全を確保してください、現状安全が確保されていないので対応をしっかり行ってください、こういう申し入れをしておりましたが、この申し入れに対して、あたかも無視する、全く責任感を感じていないような形の中で譲渡されたということは、これは社会的な責任感を欠如していると言わざるをえないと思います。
中部電力が大半を出資する一部上場企業だからこそ、その信用を元に向き合ってきた、そういう部分もあります。そういう観点からすると、県としては、株式会社トーエネックの対応に関しましては極めて社会的不誠実な行為ではないかということで、強い憤りを禁じ得ないわけであります。
今後、この菖蒲沢のメガソーラー発電施設のあり方というものは、安全性を再度、一から、きっちりと県としては検証しなければならないと考えております。地元住民の皆さまの不安を解消するために、地元の甲斐市さんともしっかりと連携をとる中で、最大限の対応を行って参りたいと思います。
記者
ブルーキャピタルマネジメントは、どこのどのような会社なのですか。
担当者
ブルーキャピタルマネジメントは、東京都港区に本社を置く会社です。
記者
どのような会社ですか。
担当者
太陽光発電事業を中心に行っている会社です。
知事
もともとブルーキャピタルマネジメントが、この太陽光発電施設の施工を行っている会社です。
記者
民間の間の取引なのでなかなか難しいと思いますが、この譲渡、売却の動きは、県の方で何か気づいていたことはあるのですか。
知事
そのような噂は耳にしておりましたので、8月31日の段階で、しっかり最後まで責任持ってやってくださいと伝えています。要は、中部電力が株式の大宗を持つ会社であり一部上場企業であるトーエネックが、この発電所を運営するということが、林地開発許可に際しての施工の財務能力の大きな判断基準になっておりますし、また、これまでのプロセスの中で、県と実際施工しているブルーキャピタルマネジメント社とトーエネック社の3社で、諸々の打ち合わせや議論を行ってきている経緯もあります。ですので、民間の話ですけれども、この林地開発を行う際に、我々としてはトーエネックが営業するからということで、その財務基盤というものを判断している部分もございました。そういう意味では、この部分については、少なくとも道義的な責任をとる必要があろうかと私は思いますし、全く関係ないとは言えないはずだということは断言できると思います。
記者
今のお話だと、8月31日の知事からの申し入れの時点で、そういう売却の動きは内々では察知していたということになるのですか。
知事
そうです。ですので、最後まで責任持ってお願いしますということで申し入れを行いました。
記者
その事業主体が変わることが、林地開発の許認可で何か影響してくることはありますか。
知事
今申し上げましたように、この地区はまだまだ安全対策上の工事というのが十分なされていない状況であります。例えば、この林地開発によって水害が発生することがないように、調整池などを今整備してもらっていますが、その調整池をしっかりとした安全な形のものに仕上げてもらわないと我々は困ります。その仕上げてもらう工事は、当然お金がかかるわけで、このお金については、我々としてはしっかりとした財務基盤がある一部上場企業であるトーエネックが行っているからというのが、一つの大きな判断材料になっているわけですので、大きな影響があると思います。
記者
今後取り消しなどという手続きが可能なのですか。
知事
これまではトーエネックの話です。今後、我々としては、譲受人となるブルーキャピタルマネジメントが、しっかりと対応するように働きかけを行っていきたいと思います。
現行法令では、残念ながら譲渡自体は良い悪いということはできない状況です。そこはある意味、法体系の欠缺なのかもしれません。それは今後の課題であって、当該事例に当てはめるには、時間的な問題もあるので、現実問題としてもその対応は不可能ですけれども、今後の大きな論点としては、その対応を考えて参ります。しかし、この案件に関して私どもができるのは、まず、ブルーキャピタルマネジメント社に対して、森林法その他に基づいて、しっかりとした対応を行うように、必要があれば行政行為を含めた対応で指導を行っていきたいと思います。
記者
これまで3者で協議してきましたが、今後はブルーキャピタルマネジメントと県とのやりとりということになるのでしょうか。
知事
そうなります。
記者
今回トーエネックさんがブルーキャピタルさんに譲渡した理由について、何か説明はありましたか。
課長
詳細な理由までの説明はなかったという認識をしておりますが、同社からは、現地を施工しているブルーキャピタルマネジメントが、一体となって発電事業をやった方がより効率的で、今の改修も順調に進めるのではないかというような理由を聞いております。
記者
今の理由について、知事としてはどういうふうにとらえてらっしゃるのですか。その理由は妥当だと思ってらっしゃるのか。
知事
その理由について、私どもがどうこうコメントするべき立場にはないと思っています。
ただ私どもが関心あるのは、安全性を確保するための工事を完成させてくださいという1点に尽きるわけでありまして、ここさえ完成していただければいい。ただその完成するだけの財務余力が、私どもはまだブルーキャピタル社について詳細を承知しておりませんけれども、上場会社ではないですよね。少なくとも会社の規模において、トーエネックよりは下回るわけですから、社会的な責任を果たしていくのであれば、譲渡するのにあたって、(譲渡先には)しっかりとした財務基盤があって、県から求められた安全性確保のための工事というものをしっかり遂行できますという説明があってしかるべきだろうと思いますが、それすらせずに、こういう対応をされるのは何か大きな問題があるのですかと私はむしろ聞きたいと思っています。
記者
仮定の話ですが、このブルーキャピタルマネジメントが、これまで県が求めてきた安全基準に届くような工事をしなかった場合には、どういう措置があり得るのでしょうか。
知事
まずは、ブルーキャピタル社には、あらゆる手段を尽くして安全確保のための工事をしっかりとやっていただきたいと思います。その上で、これは一般論ですけれども、現在の復旧工事が計画どおり行われなかった場合には、森林法その他の規定に基づきまして、措置命令を発出いたします。
また、その命令に従わない場合は、刑事告発も含めまして、しっかりした対応を行うとともに、林地開発許可自体の取り消しということも、行政手続法に基づいて行うことが視野に入って参ります。
記者
そもそもブルーキャピタルが施主として工事をして、その完成後にトーエネックが買い取って売電事業をするというのが、この2社の関係性だったと思います。そのトーエネックが今回ブルーキャピタルに譲渡したというのは、既にトーエネックはブルーキャピタルから一旦購入していたというか、買い上げていたのでしょうか。
課長
トーエネックからは、既に発電設備は譲渡を受けているというような説明を受けています。
記者
8月の申し入れのときに私も取材をさせていただいたのですけど、あの時点で、安全対策では違う資材を使うなど契約と違っていたということで、速やかに修正するよう知事は求めていらっしゃったと思います。
この取材をした時は、思わず静岡県の話を連想させてしまったのですが、改めて知事がお怒りの点を教えてください。
知事
林地開発許可を取って山の木を切りますと、山の木を切ったことによって、そこの保水能力が低下するわけですので、それを調整池において受けとめて、下流に土石流その他災害が及ばないようにするということが大前提になっています。
林地開発とその調整池のしっかりとした対応とは密接不可分のセットなわけですし、この林地開発がなければ太陽光発電のパネルを設置することはできないわけですので、いわばその太陽光発電事業とこの調整池の設置というのは、密接不可分だといえるわけです。
天下の一部上場企業たるトーエネックさんが、山梨県において太陽光発電をされる。その際に、密接不可分なセットであるべき調整池について、極めて不十分なものであった。これに対して、企業の社会的責任はもとより、商売上の道徳の観点からも、我々は是正を要請し、彼らはそこでわかりましたという答えを、その場で言ったのはご承知のとおりだと思います。
だとすれば、これは場合によっては人の命が関わる話ですから、ブルーキャピタル社に譲渡した理由は商売上の理由、それは商売を勝手にやればいいんですけれども、ただ人の命に関わりうるような最も重要なことを犠牲にした商売というのは、私はありえないと思っていますし、そこをないがしろにしたまま、もう関係ありません、譲渡しましたから関係ありません、このスタンスはいかがなものかと、社会の公器としての企業のあり方として大いに疑問があるわけであります。
私の憤る理由というのは、まさに人の命に関わるようなところをいい加減のまま、あたかも放擲して逃げ去るというようなことは、これは余りにも無責任ではないでしょうかと思います。
記者
やはり住民の方々が今一番不安に思っていると思います。今後いろいろと手続きに時間もかかるとは思いますが、県としてその住民の方々の不安を取り除くためには、新しい事業者さんに、例えば早期に住民説明を求めるであるとか、どういった対応をとっていこうと思っているのでしょうか。
知事
この段階においては、まず、私たちが安全性を確認しなければいけないことではありますが、しっかりとした安全性が確保された調整池、その他の工事を完成させるしかないと思います。ですので、ブルーキャピタル社には、これまで出してきた復旧計画どおりにやっていただくということに尽きるのだろうと思います。
我々は、「資金負担ができないから工事が遅延します。」これは許さない、ということにつきます。
記者
もちろん、このブルーキャピタル、トーエネックに問題があると思いますが、県として、コミュニケーション不足が起きてしまった点についてはどのようにお考えなのでしょうか。
知事
一言で申し上げると、性善説に立って向き合ってきた我々が馬鹿だったということなのだろうと思います。この点に関しましては、今後しっかり反省をして、とにかく我々の一番重要な価値は地域の安全、住民の皆さんの生命、財産でありますので、ここを今後、あらゆる面において厳しく見ながら対応していきたいと思います。
コミュニケーションミスといえばコミュニケーションミスかもしれませんが、天下の電力会社が大宗を保有する会社であり、なおかつ、当該会社自身も一部上場企業という、社会的に認められ多くの方が投資されているような、いわば社会の公器なわけでありますが、そこが自らの事業に関連して、地域住民の生命に対する危険を犯してしまうようなことは、まさかしないだろうという社会的な信頼はあったと思います。
それを信頼することは、私としては社会のあり方として、本来はあるべき姿だと思います。ですから、甘かったといえば甘かったのかもしれませんが、ただ、今まで山梨県において、様々なことを、ある程度信頼関係に基づいてお互いやってきたというのが大宗です。もちろん、摩擦的に様々な事があったにしても、普段の県の動きの中で、やはりお互いの信頼関係をもとにしていこうというのは、むしろデファクトスタンダードであったと思うのですが、今申し上げましたように、それがミスだったといえばミスだったし、馬鹿だったといえば馬鹿だったということで、今回結果としてこういうことが起こったこと自体は反省をしなければいけません。
ただ、今お話のあるような、普段用語としてのコミュニケーションミス、コミュニケーションギャップということでは括れない事案なんじゃないかなと私は思います。