2022年1月24日の衆院予算委員会で、高市早苗氏(自民党政調会長)が、全国の再エネ問題に言及しました。
地元の理解を得られない再エネ開発の問題
高市早苗(自民党政調会長)
令和3年10月22日に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成は再生可能エネルギーを36から38パーセントとし、その中でも太陽光と風力が主力とされています。
しかし昨今、各地で太陽光や陸上風力の発電設備設置への反対運動が起きていることにも留意しなければなりません。
昨年末、北海道当別町の町長と町議会議長が政調会長室までお越しになりました。
当別町では民間事業者によって高さ156メートル以上、ローター直径117メートルの巨大な陸上風力発電設備が12基も設置される計画が進んでいます。
すでに昨年3月24日に経済産業省の売電認可が終わっており、事業者は再来年令和6年の着工を目指しています。
当別町では事業予定地の森林近くに開発された住宅地に、緑豊かな環境を好む若い世代の世帯が多く移住してきておりましたが、巨大な風力発電設備が設置されたら景観が悪化するとして、住宅地の方々から町から出ていくという声が上がってしまっているそうです。
事業者は昨年4月と10月に説明会を実施しましたが、町民の皆さまの納得を得られず、当別町議会では昨年11の臨時会と昨年12月の定例会で2回にわたって風力発電事業に反対する請願陳情が全会一致で採択されました。
町長や町議会議長から伺った懸念事項は複数あるのですが、第一に、せっかく若い世代の方々が移住してきてくださったのに町から出ていかれると地方創生や人口減少を抑止にも逆行し町の住民税収も減ってしまうという心配をしておられました。
総理は令和4年度予算案においてもデジタル田園都市国家構想に力を入れておられます。
大都市への人口集中から地方分散、地方定住の環境づくりを目指しておられる中、当別町のように人口流出を招きかねないケースにつきまして総理はいかなる解決策があると考えでしょうか。
萩生田光一(経済産業大臣)
お答えします。
風力発電など事業者が大規模な再エネを導入する際に、各地域の実態に応じて自治体や地域住民の方々のご理解を得ながら進めていくことが重要です。
特に景観の問題や土砂崩れなどの防災上の懸念がある場合、自治体や地域住民の方々のご意見をよくお伺いし、適切な調整が必要となるケースがあり、こうした地域の懸念にしっかりと向き合って取り組むことが必要だと思っております。
そのため、まず景観を含めた環境に対する影響の低減策については、環境影響評価法、および電気事業法に基づき経産省と環境省が連携をし、立地する自治体の意見を踏まえて適切に評価確認することとなっております。
加えて、再エネの適正な導入拡大を支援する再エネ特措法では、発電事業者に対して地元住民と適切なコミュニケーションを図ることや、所在する自治体が定めた条例を含めた関係法令の順守を求めております。
これらの取り組みを通じ、今後も自治体や地域のご理解を図りながら、再エネが地域と共生した形で導入されていくことを取り組んでまいりたいと思っております。
中国資本と関係の深い事業者
高市早苗
今ご答弁いただいた環境影響評価法なんですが、これは環境アセスを義務付けていますが、当別町ではこの環境アセスも中国資本と関係の深い事業者が委託を受けております。
また再エネ特措法、コミュニケーションをとるということですが、残念ながらこれは努力義務でございます。
さらに当別町の風力発電所計画では、この土地のとりまとめを行っている事業者は他県でもソーラー発電事業を行っており、その発電所は70パーセントの株式を上海電力が保有しているとのことでございます。
中国系資本と関係の深い事業者が、航空自衛隊レーダー基地からおおむね3.5キロに位置する土地を取得していることから、町長や町議会議長の第2の懸念事項は国防上の問題があるのではないかということ。
第3の懸念事項は夕張市の「マウントレースイ」のように、中国系企業が転売を繰り返す可能性や、急に発電事業を止めるリスクがあるということでした。
経済産業大臣に伺います。経済産業省が売電認可をした事業者による再生可能エネルギーに、地域の電力供給を頼った場合、転売や事業停止による電力供給停止リスクはないのでしょうか。またそういったリスクをなくすための法制度についてご紹介ください。
萩生田光一(経済産業大臣)
再生可能エネルギーによる電源も含めて、電力の安定供給は国民安定的生活と経済活動にとって不可欠であり、日本全体で電力の供給を管理し安定供給を確保する仕組みを構築してまいりました。
その上で個別の事業者に対しては、一般論として外国投資家による国内の発電事業への投資や別の外国投資家への発電事業の転売等にあたっては外為法による事前届出が義務付けられており、国の安全等の各観点から厳格な審査を実施しております。
電気事業法では、電気の供給安定が損なわれるおそれがあり公共利益を確保するため特に必要がある場合には、経産産業大臣が発電事業者に対して供給命令を出すことも可能としております。
今後とも電力の安定供給の確保に万全を期してまいりたいと思います。
再エネ推進で進む地球温暖化?!
高市早苗
奈良県でも現在太陽光発電設備の設置計画への反対運動が複数の自治体で起きております。
森林を切り開いてメガソーラーを設置することについて、議会や住民の皆様は環境破壊、水道水源の汚濁、土砂災害などを心配しておられました。
土砂災害については電気事業法でも一定の規制があることは承知をいたしております。
これまでは地球温暖化対策にも資する施策として、国土交通省は緑地の整備や屋上緑化に取り組み、農林水産省は森林を整備し、環境省も美しい自然環境の保護に力を入れてこられたはずでございます。
菅内閣時代に再生可能エネルギー推進の必要性を最も強く主張してこられたのは環境省でございました。
メガソーラー設置のために、豊かな森林の伐採が進むことによって、返って地球温暖化が進んでしまうのではないかという疑問の声も伺ってまいりましたが、環境大臣のお考えをお伺いします。
山口壯(環境大臣)
確かに2050年のカーボンニュートラルに向けて、再エネの再電源の導入が不可欠ですけれども、しかしながら、ご指摘のように太陽光発電のために、みだりに森林伐採が進めばこの自然環境あるいは景観への影響、先ほどもありました土砂流出による濁水の発生、あるいはCO2吸収源としての機能を含めた森林の多面的機能への影響が懸念されます。
こういう懸念が生じないように環境に適正に配慮、あるいは地域における合意形成を丁寧に進めるということが、より適切な再エネの導入につながるというふうに認識しています。
このため環境影響評価法では大規模な再エネ事業について、環境アセスメントを義務付けており、環境保全の見地から、環境省としても必要な意見を述べています。
また特に今年の4月からは、改正地球温暖化対策推進法により、地域における円滑な合意形成を図りつつ、再エネ促進区域において適正な環境配慮を通じて地域に貢献する再エネを促進する仕組みが導入されます。
環境保全の観点からは、促進区域とすべきでない場所の考え方を提示するということも含めて、改正法を効果的に運用することによって、地域と共生する再エネ導入を促進していきます。
さらにまた経済産業省で行われているように、この再エネの事業を規律強化のための取り組みも進められていると承知しております。
関係省庁とも連携しつつ対応してまいりたいと思います。
地域住民の合意形成は不可欠
高市早苗
ありがとうございます。
この改正地球温暖化対策推進法、4月からということなんですが、これは法施行前に売電認可や土地取得が終わっていてもこれは適用可能でございますか。
山口壯(環境大臣)
法律の施行は4月からですけれども、従来から地域における合意形成を丁寧に進めるということを努力義務として申しているところであり、正式には4月からでしょうけれども、これまでの考え方の延長だと認識しています。
高市早苗
しっかりと目配りした運用をお願い申し上げます。
今後、デジタル化の推進によりまして消費電力は急増してまいります。
総理のデジタル田園都市国家構想では、5年程度で十数カ所のデータセンターを整備するとされていますが、データセンターの消費電力も現在の技術では膨大なものになります。
この地球温暖化対策と、高圧で安定的な電力供給が必要な産業の維持発展を両立させるため、昨年10月の衆議院選挙の自民党政権公約では、安全が確認された原子力発電所の再稼働。SMR小型モジュール炉の地下立地。究極のクリーンエネルギーである核融合、つまりウランやプルトニウムが不要で、高レベル放射性廃棄物が出ない高効率発電の開発を、国を挙げて推進し、次世代の安定供給電源の柱として実用化を目指すことをお約束いたしました。
令和4年度予算案には、早速、核融合発電の実現に向けた基幹技術の研究開発予算を計上はしていただいております。
主に産業向けの安定的な電力供給の方法として、特に安全が確認された原子力発電所の再稼働や、SMRについて、総理のお考えを伺います。
岸田文雄(内閣総理大臣)
まず、委員ご指摘のようにデジタル化が進む中で、使用電力量が増大する。電力をまかなう賄うためにはグリーンという観点もちろん大事ですが、あわせて安定供給と、そして価格、コスト。これらもしっかり勘案していかなければいけない。そのためにも多様なエネルギー源が求められる。これは我が国のエネルギー政策の基本であると思っています。
そして、その選択肢の一つとして、ご指摘の原子力でありますが、今ある原子力発電所については安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていく。そして更なる安全性の向上に向けて技術開発などに不断に取り組んでいく。これが基本的な考え方です。
そしてその上で、2050年カーボンニュートラルを実現するために、先ほど言いました、あらゆる選択肢を活用するという考えのもと、日米間の協力が様々な形で進んでいることも踏まえて、小型炉や高速炉をはじめとする革新原子力の開発などに着実に取り組んでいきたいと思っています。
また、非炭素電源となり得る核融合は、気候変動問題への対応に重要な技術であると認識しており、政府としては核融合研究開発、これも引き続き推進していきたいと考えております。