2021年8月24日にエネルギーフォーラム主催で実施されたオンラインセミナーの一部をダイジェストで掲載します。
司会:石川和男・社会保障経済研究所代表(経済産業省アドバイザー)
ゲスト
鈎裕之・公益社団法人東京電気管理技術者協会千葉支部長
山口雅之・全国再エネ問題連絡会共同代表 函南町軽井沢メガソーラーを考える会共同代表
森林を破壊する本末転倒な政策
石川
まず、こちらの映像をまずはご覧になった上で議論の方に移りたいと思います。
私から感想を申しますと、地元の手続きということで環境アセスや条例上などリーガルな部分での手続きは済んでいるということなんですけれども、しかし、仮にたとえ許可を受けたとしても不測の事態だとか自然災害でやられてしまうものが多々あるわけでありまして、規制とかアセスとか、そういったもので全てを賄い切れるわけではないのが事実なんです。
山口
私自身このメガソーラー問題を知ったのは2年ほど前なんですね。
それまでメガソーラーって何のこと?っていう世界でしたが、2年前に地域の方から相談を受けて取り組んだその2年間の間にいろいろ勉強したり調べたりした結果ですね。これがいかに危険であり国民の生命や財産に深刻な被害を与えるかということを、とても理解しました。
今、政府はカーボンニュートラルということで政策を進めておられます。それは私も支持いたします。
しかし、この森林を破壊する行為というのはまさしく二酸化炭素を吸収して酸素を供給するこの森林の持つ自然の循環作用を自ら壊してカーボンニュートラルを語るのはまったく本末転倒な政策であると思うんですね。
ここをぜひ政府当局はもう一度冷静に見ていただいて森林を保全することがカーボンニュートラルに繋がるという視点で私たち国民の声のとして政府機関に届けたい。その様に思っております。
電気設備の技術基準の盲点
石川
今のお話ですと実は最近までよく知らなかったというところで、逆に鈎さんの方は電気技術者協会に今おられるということでおそらくいろんなお資格もお持ちだし、ツイッターなんかを拝見しても非常に多くのサンプルを挙げられてますが、そういうお立場で鈎さん、この映像も含めてどうでしょう。
鈎
先程の笠間市は私も実際に見に行きました。
すごい開発だと思いましたね。似たような開発はあちこちにあるんですけれども現地の方とお話しすると「これを誰が許可したんだ」ということをよく聞かれます。
「県知事がこんなことを許可しやがって」とかいう声を聞くんですけど知事でもないし市町村の首長でもないんですよ。
「これは経産大臣が認定という形で出しているんですよ」って言うと、もうたいてい地元の方はびっくりされるんですね。
もうトップの経産大臣が認定を出しちゃって、後追いで知事であったり市町村の首長が条例とか環境アセスとか後追いで穴を埋めるというそういうことをやっているのが今の現状です。
こちらの図をご覧ください。真ん中の赤い枠で囲っているのが私の立場です。
一番下に書いているとおり、そもそも電気工作物そのものが安定した基礎・土台の上に設置されるということが前提で、その前提があるから電気設備の技術基準というのが基礎に関してはあまりしっかり書かなくてよかったんですね。
それがFIT法が出てきて、いきなりその基礎なしのものがどんどん増えてきてこれは何だと思って私はすごくびっくりしたんですね。電気設備の技術基準の盲点である今まで安心した建物の上にあったはずのものがそうではないものが出てきた。これはどういうことが起こるんだろうということで問題意識を持ち始めました。
投機目的で転売されるFIT認定ID
石川
私もよく聞かれるのは、まさに鈎さんもおっしゃったように、経済産業省がよくうんって言いましたねということなんですね。
これ通常の規制行政の場合ですね。経産省だろうとどこの役所だろうとこういうことをすんなりいいよっていうことに私は見たことないんですよ。
多くの人が勘違いしていますが、このFIT法は2011年3月11日の午前午前中に閣議決定された。つまり、震災が起こる前に決定して、その6時間後に津波が来た。それで福島第一原子力発電所が事故を起こしてそれで原発はダメだってなり、次は太陽光で行こうってなんたんです。
個人名は上げませんが、当時の総理大臣と非常に有力な財界の方々が何人かいらっしゃって行くぞとなり、その勢いでもって2012年7月にこれが施行された。
山口
FIT法に関してお話させていただきますと、FITにる売電権のIDが今転売されてます。
だいたい40メガぐらいのFITのIDは約10億円くらいで取引されてると思うんですね。
これは国の制度であって、しかも私たち国民一人一人が電気料金に本来払わなくていい再エネ賦課金を払わされているわけです。それによって利益を得ている事業者のこの構図の中でそのFIT認定IDが、投機目的の転売がまかり通ってる。これをやはり法規制すべきではないのか。
経産省の幹部職員の方も好ましくないのは同感ですと、そこの規制するにあたっては法的な問題はいろいろクリアせざるを得ないというのはあると思うんですけどやっぱり国民感情としては国の制度がそういう一部の悪質な事業者たちの利権の大きなターゲットにされているのをもう10年ほど放置しているというのはいかがなものか。
森林法には取消し条文がない
山口
それともうひとつ林地開発許可。森林法ですけれども森林法には許可の条文はありますけれども取消し条文がないんですね。ですから私たちはたくさん悪質な事業者の手口を調べてまいりましたがやはり共通しているのは、許可さえ取ってしまったらこっちのもんだ。後は例え残置森林さえ残さないでももう森林を切ってしまったら中止命令かけられませんから。事業者は、こういう法の不備とか行政の行政指導の限界とかを熟知しているんですね。
環境アセスも単なるセレモニーでしかない。何の強制力も罰則も担保されてませんから。おまけに環境アセスの終了判断は事業者任せになっています。つまり事業者の思うがままなわけです。ですので形式的な手順さえ踏めばもう事業できるんですね。環境アセス終了しましたということで中身は別なんですよ。ですからそういうことはすべて事業者はわかった上で狡猾な手口によって国民を騙してる。そして利益を貪むさぼているいうのが今の日本の大きな闇なる部分だと思うんですね。これをみんなで知恵を出し合って改善改正していくべきだと思っております。
電気管理技術者の仕事の根幹は「公共の安全」
石川
山口さんのご意見は地域住民という観点だと思うんですけど、鈎さんの場合は電気管理技術者ということで電気事業法に基づく保安規制そういったものを熟知されていて仕事されてきたわけなんですけれども、そういう安全を司るという観点にいろいろいろいろな太陽光も含めてご覧になっていますが、その曲さんのお立場として今のソーラー開発をどのように絡んでいますかね
鈎
はい、私の職業は電気事業法に、もうこういう仕事をしろと決められているものでして、電気事業法あってのお仕事なんですが、そこに電気工作物をどう運用するかでも第1条の目的のところには「公共の安全」という言葉が出てくるんですね。もう第1条ですので一番根幹なものです。
しかも「および環境の保全」という言葉も出てきますがこれを外すことはやっぱりできないんですね。
基幹法として電気事業法がこういうことをうたっているとその中心になる電気事業法の一環それを支えるための施行令であったり技術基準があったりとかいろいろ出てくるんですが、電気事業法には39条と56条に「技術基準」という4文字の言葉が出てきます。
まさにこの技術基準というのは、やっぱりちょっと専門的なものですので素人の方には分かりにくいから電気主任技術者がこれを適合するようにこれをちゃんと守るようにするように国家資格を与えて運用させようと。
これはもうかなり戦前からある資格ですけども、それをやっている制度ですので、さっき山口さんもおっしゃったようにメガソーラーも風力もそうですけど電気工作物である限りは公共の安全と環境の保全というのは絶対守って守らないといけないんですね、これ絶対そうなんです。
でもそうじゃないようになってきてるっていうのが根幹の問題です。もうそれは常日頃思っております。